ジェンナーロ・ガロファロ物語
1941年1月16日 ジェンナーロ・ガロファロ氏はイタリア・ナポリの南部に位置する地中海沿岸の町、トーレ・デル・グレコに生まれました。ジェンナーロは幼い頃から、美術への関心が深くわずか5歳の頃から新聞に掲載された絵画などの写真を切り抜いては集めているような子供で、中でもお気に入りはミケランジェロの作品でした。12歳の頃よりカメオのクラシックモチーフの制作を始めます。クラシックモチーフとは、いわゆる、昔からカメオに用いられてきた古典的、伝統的なモチーフのことで、例えばボッテチェッリの『春』、レーニの天井画『アウローラ』やレオナルドダ・ヴィンチの『最後の晩餐』、フランチェスコ・アルバーニの『キューピッドのダンス』などが代表的です。過去の偉大な芸術家達の作品からインスピレーションを得てカメオに彫り込みました。
1957年12月、ジェンナーロ16歳の時、初めてのコンクールで最優秀賞を受賞します。当時のジェンナーロの美術の先生であった、チーロ・スコーニャミッリオは、若きジェンナーロの才能を見抜き、ボッテチェッリのプリマベラを題材に彫った彼のカメオ作品を『トーレ・デル・グレコ職人芸術コンクール』に応募しました。並みいるカメオの巨匠作家達を押しのけ、わずか16歳のジェンナーロが優勝を果たします。授賞式には主賓として、イタリア共和国初の大統領、エンリコ・デ・ニコーラも参列していました。
1970年中頃、ジェンナーロは独自のスタイルの追求に目覚めます。横顔の表情や、パッネッジョと呼ばれる布のドレープの表現、そして彼の想像上の師であったミケランジェロから学んだ”手”の表現の模索を始めます。そして1975年2月に記念すべき第一回目の最高のカメオ作家の栄誉を称える彫刻刀賞を受賞します。受賞作は【ダンナート】(苦しむ人)、ミケランジェロのスケッチ”苦しむ魂”よりインスピレーションを得た作品でした。
1984年、ジェンナーロは、美術評論家であるアンジェロ・カラブレーゼによる本の出版によりその名を広めます。本のタイトルは【2000年へ向けての芸術と表現】で、カンパーニャ州の14人の職人について語った美術本です。
1990年、他のカメオ作家と全く違う表現方法である、ガロファロスタイルが完成します。伝統的なカメオ表現、過去の偉大な芸術作品から得た表現法、そして自ら編み出した独創的な表現に、熟練した技術が加わりました。パッネッジョとドラぺッジョという二つの独特のテクニック、そしてミケランジェロの”手”マスク”ドラゴン”など、他の作家と一線を画す、彼の迫力のある作品です。
そしてついに、彼の作家人生の集大成ともいえる、【十字架の道行】が完成します。これらの作品はイエス・キリストが十字架を担って歩んだ受難の道のりを14枚のカメオで表現した超大作です。2000年12月に、彼はこの作品によって、時のローマ法王であったヨハネ・パオロ二世より神のご加護が与えられました。
2001年に開催されたイタリア大使館主催のジェンナーロ・ガロファロ展には高円宮妃久子様もご来場され熱心にジェンナーロのお話しをお聞きになられていらっしゃいました。
現在ではジェンナーロの次男、クレシェンツオ・ガロファロ氏が代表者となってガロファロカメイ社を設立。ジェンナーロの後継者として、姉で作家のジャンナマリア夫妻とともにクレシェンツオ自身の作品等も織り交ぜながら積極的に作品制作と経営にと忙しい日々をおくっています。
2013年にジェンナーロ・ガロファロ氏の工房にお邪魔しました。ガロファロファミリーはみなさん仲良しで、とても優しい人達です。長男のフィリッポの経営するピッツェリアでとても美味しいピザをご馳走して頂きました。偉大なるイタリアンシェルカメオ界のカリスマ作家、ジェンナーロ・ガロファロ氏はこのような環境の中で素晴らしい作品を世に送り出しているのでした。